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2014年6月 8日 (日曜日)

THE BIG FELLAH 1

作:リチャード・ビーン 翻訳:小田島恒志 演出:森新太郎
2014年05月20日(火)~2014年06月08日(日)世田谷パブリックシアター
内野聖陽:デイヴィッド・コステロ(IRAのNY支部リーダー)
浦井健治:マイケル・ドイル(NY在住の消防士、IRAメンバー)
明星真由美:エリザベス・ライアン(IRAメンバー)
町田マリー:カレルマ(プエルトリコ系の女)
黒田大輔:トム・ビリー・コイル(NY市警、IRAメンバー)
小林勝也:フランク・マカードル(IRA幹部)
成河:ルエリ・オドリスコル(IRAメンバー)

もう、まとめようとか、短く校正しようとか、そういうのは諦めた。

初日は前方席で、言葉の奔流に圧倒され、その言葉を発する役者さんにどうしても目がいってしまったので、それ以外の役者さんのお芝居はあまり目にはいらなかったかもしれない。ストプレはせいぜい観てもがんばって3回かな、と思っていたので、これはキツいかと。持っているチケットの枚数を思い浮かべながら、正直なところ悩んでいた。観終わってからも、どーん、とくる重さをどうしようか。
それが、後からじわじわくる。二回目の三階席は思ったほど遠くは感じず、そして初回で拾えていなかったものを拾いながら観ると、これがどんどん面白くなってくる。そして相変わらずのリピーターと化し、日本語でもないのに読むわけないと思っていた戯曲まで買って読んでしまうという、巡り会えてよかったと思う作品の一つになった。

役者さんたちが勉強会をしたとか、原文を読んだという話が、解った気がする。観てるだけの観客だというのに、セリフの一つ一つを掘り下げて語ったり、戯曲を読んだ時間が楽しかった。
好評価が多かった劇評の中で、そんな勉強会をするのは当たり前だと切って捨てるような、とある劇評をチラッと読んだけど、役者さんの批判ばかりで、この方は全然受け取れてないのかと残念に思ったものがあった。
当たり前なものと少し違うようなやり方だったのかもしれないし、通常そうなんだとしても、とっつきにくそうなテーマだけど、お客さんが勉強する必要はない、伝わるように役者が勉強してますから身構えずに観に来てね、という意図を発信するのがいけないとでもいうのか。

プロローグ 1972年3月17日
キルト姿の内野聖陽さん演じるコステロの長いスピーチにまず驚いた。
コステロの葉巻の煙が客席半ばまで漂ってきて、きつい。タバコの演出には何か意味があるものなのか、できればないといいのだけど。それか空調をしっかりするか。
初日は物語世界に入り込めず、このセリフの量は大変だな、と思いながら観ている時点でなんだか負けって感じ。内野さんの表情と言葉は、IRAのNY支部長という肩書きが想像つかないほど、柔らかだった気がする。情報はすっきりとは頭に入ってこなくて、一幕へ。
スピーチにしても、セリフにしても、無駄がない気がする。伏線とまでいかなくても、物語に繋がる単語だったり人名だったりが散りばめられている。私は一回じゃ理解しきれなかったけど、一回だけで面白さが伝わってる人が羨ましい。

第一幕 一場 1972年3月19日
マイケルのアパートで成河さん演じるルエリが電話に向かって訛りのきつい言葉でしゃべっていた。日本のどこでもない訛り。今までハムレットと9days Queenくらいしか観てないはずだけど、それもスッパリ忘れた。この人、凄いなと思ってしまった。
訛りはときどき聴きづらいのだけど、聞き逃せない重要なことを言っていたりしたので、最初から気を抜けない。
浦井くんが演じるマイケルは、タンクトップでぬぼーっと、いかにも起きてない、という表情で自分の部屋から出てきて、ルエリから声をかけられても上の空。
腕を出している浦井くんが珍しくて、腕!と思っていたけれど、後でそれどころではなくなるという…。
そのマイケルの声は低い。

マイケルの部屋にある金の入ったバケツ、これすらなんであるのか最初はわかってなかった。コステロががプロローグでアイルランド系アメリカ人からの寄付だって言ってたのに。この当時はIRAの活動にもそれだけの支持が集まっているという象徴? でも、この時点でまだマイケルは仲間に入っていないんだよね。電話の会話で、ルエリはチェックしに来てよ、と言ってて、これから初めて会うんだとわかるし。

無口な設定のマイケルと、しゃべらずにはいられないルエリ。どうしても声に反応してルエリを見てしまった。でもそれは正しいとは思う。雑談を延々と続けているのかと思いきや、ルエリが発する情報量の多さには要注意。何回観ても、もう1度聞かないと拾っていないものがありそうだと思ってしまう。大多数の人は一度しか観ないと思うけど、一度で理解できる人は少なそう。複数観るのが正しいというわけじゃないけれど、二度以上観ないともったいない。

ココナッツの毛が全部抜けた歌は耳についてしまう。絶品だな。

壁に釘で打ち付けられているギターを見て、ルエリがかなり大げさに驚いてみせるのも印象的。フランクに見つかったらただじゃ済まないぞ、目隠しされて膝にドリルで穴を開けて…ラードになるほどボコボコに殴られる、武闘派。コステロもこのギターについて口にしている。エリザベス・ライアンにしても、本国にいる関わりのないような人物をサラッと話すように、彼氏がいなくて、何人もの男が口説いたけど、相手にされなかった。なんてことを最初っから話している。

カレルマが吸っているのはたばこじゃなくてマリファナなのかな? その後のルエリとカレルマ会話からすると。何か粉のようなものを出して、紙で巻いて吸ってる。ちょっと浦井くんに吸わせないで、とか現実に戻って思ってしまったり。二回も咥えさせられて、渋い顔をするけど、それが嫌なのか、寝起きだからなのか。
カレルマの言動も、後に明かされる彼女の正体を知ってしまうと、ああ、だから? となる。

トム・ビリーは登場して早々、ホモのカップルを見た話。同性愛にはかなりの偏見を持っている様子。人種的な偏見と女性蔑視も持ち合わせている。当時のNYでは大多数の人がそう思っているのだろうか。マイケルは最初はそんなこと思ってないみたいだったのに。

帰らない、私はマイケルのお客でしょ、と言うカレルマに、先に約束してた、バケツをここに集めてコステロに渡すんだ、しゃべっちゃうマイケルの謎、一つ。ほんとはマイケルのお客というよりルエリが連れ込んだのだけど。

もう帰って、とテーブルに置いてあるマリファナだかタバコを手にとって渡そうとするのに受け取らないカレルマ。コステロに銃で脅されてようやく逃げ去る。待ってー、と追いかけていくマイケルをコステロが鍵をかけて締め出してしまうけど、なんでマイケルはわざわざカレルマを追いかける必要があるのかと、最初はわからなかった。忘れて行ったマリファナらしきものを届けに行っただけなのね。

IRAにとっての密告者がどういう存在かもここで言ってて、マイケルがその密告者を撃てるか?という問いにルエリが明確に無理だな、彼は消防士で命を助けるのが仕事だから。でもコステロは彼をポーン扱いして、それでいいと言うのだ。マイケルはこの時点でチェスの駒でしかない。マイケルは撃てなくてもよかった。このときは。
マイケルがIRAに入ろうとする理由が、民族問題だというなら、なかなか理解には至らないかもしれない。とりあえず、そういうものと受け取るとして。

戯曲ではマイケルが語ってはいるけど、そこはカット?されて、コステロに例のブラッディサンデーの事件で腹が立ったんだろ、とだけで済まされてる。
マイケルの理由が、そうやってあっさりになっているのは、その方がマイケルがそういう、すぐに流されてしまうような性質だということがより表現されているんじゃないかな。

人生はもうおしまいだと、20代の若者がそうすり込まれて納得してしまうのがとても苦しい。
IRAだとわかって結婚する女はいない。コステロに言われたことを繰り返すだけのマイケル、本当にこれからの人生がどうなるのかわかっているようには思えない。

マイケルがカトリックではなくてプロテスタントだという、おそらくは衝撃の告白に対して、最も偉大なアイルランドの偉大な人物…だったかな…をルエリに言わせているけど、その中の一人、ジョージ・ベストが耳についた。これ、戯曲には出てこない。

一幕ではマイケルの部屋に北アイルランド代表らしタオルマフラーが置いてあって、ルエリが頭に巻きつける緑のTシャツはよく見えないけど、もしかしたら北アイルランドのユニフォームかもしれない。違うかもしれないけど。ただのSt.・パトリックスデイに因んだものだけのような気がしてきた。

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